2026.06.28 8:21 読了。

まさしく傑作。本当に伊坂幸太郎ってすごい。 読み終えた瞬間、思わず唸った。

ずっと777が文庫化するのを待っていて、発売日に買った。そして、じっくり読めるタイミングを待って一気に読んだ。多分、この作品は勢いそのままに読んだ方がいいと思ったんだけど、その選択は間違ってなかった。 なんていうのかな、読めば読むほどいろんなものがいっぱい繋がってきて、脳内でアドレナリンが放出されていくのを感じるんだよね。それでページをめくる手が止まらなくなる。そんな感じ。

伊坂幸太郎の作品は私の中で「生きてくうえで避けては通れない人間の性とそれに付随してくる悩みや疑問、それに対しての伊坂幸太郎なりの答え」みたいなものがどの作品にも描かれていると思っているんだけど、今回は本当にこの今の現代社会にはびこってる悩みや闇を上手いこと描いたな、と思う。

前に読んだ『火星に住むつもりかい?』は情報社会で生きていく上での『取捨選択』が、その次に読んだ『逆ソクラテス』では『信用や正直さ、誠実さ』がテーマになっているのでは?と推測してきた。

じゃあこの『777』は何がテーマなのかというと、『なぜ努力をせずとも上手いこと人生が運ぶ人間と、努力しても上手く人生が運ばない人間がいるのか』がテーマになっているのでは、と私は解釈した。 もちろん他のテーマも隠されているのかもしれないけど、私が読んだ感想では、これがテーマだと思った。

なんかそれっぽく書いたら難しく感じるから、私がこの作品を読んだときに浮かんできた言葉の『カースト制度』と今後は言うことにする。

私が言うカースト制度とは、生まれ持ったものや才能が目立つおかげで運良く生きていけるような人たちと、生まれ持ったものが目立たず、苦労してやっと生きていける人たちとの階級差のこと。 それこそ、学生のときとか、社会人をしている中でも日々感じるようなあの不公平感みたいな、それをカースト制度ということにする。 そのカースト制度に当てはめられてしまうことで生まれてくる気持ちが今回とても描写として書かれていると思うんだよね。

そして、この作品は殺し屋シリーズということで、今回もまたたくさん業者が出てきて、いろいろと重ならないはずのところが重なっていくわけなんだけど、その業者たちがまさしくカースト制度を表しているように感じた。

容姿が整い、生まれ持った才能で難なく人生を楽しんできた『六人組』、学生の頃から生まれ持ったものが恵まれた人たちを羨んで妬んできた、いわゆる持っていない人生を送ってきた『マクラとモウフ』、努力はもちろんしてきたけど、首尾よくやってきた『高良と奏田』。

私がもし分類していいならば、カースト制度のトップに六人組、下層にマクラとモウフ。 そして高良と奏田はそのどこにも属さないポジションと位置付けるかな。

そして、この物語のスタートはマクラとモウフのパートから始まるわけなんだけど、そこで早速『スイスイ人』という単語が出てきて、カースト制度の一番上にいる人たちを羨む描写が出てくる。 そこから物語がスタートし始め、主人公の七尾がいろいろと不運に巻き込まれていく、という流れ。 また、カーストの上にいる六人組は、上にいるからこその会話をするし、高良と奏田はどこにも属さないからこその会話をする。それが何とも人間らしい。

読み終わった瞬間唸った、と最初に書いたけれど、今回は殺し屋たちのスリリングな戦いというエンターテインメントな内容に、しれっと一緒にこの現代社会の闇であるカースト制度について上手く織り込んでいて、本当にその塩梅が素晴らしいんだよね。

カースト制度がどうして生まれるのか、という考察のようなものサラッと登場人物たちの会話の中で描かれているし、もちろんそれに対しての答えのようなものも、登場人物たちの会話の中で描かれていると私は思ってる。

ちなみに、その答えのようなものは物語の中盤にサラッと出てくるのだけど、それを言った業者が私にとってはとてもしっくりきた。「この人がその役割なんだ」って納得した。

それと同時に、私が学生の頃からカースト制度に対して思っていたことを伊坂幸太郎がこの作品で「こう思うんだけど、どうかな?」と同じように示してくれているように感じて、とても嬉しかった。 なんていうか「私、間違ってなかったんだ」って思わせてくれるというか、「大丈夫」って背中を押してもらえたようなそんな感じがあって、読み終わったときにはポロっと涙がこぼれた。

正直、私はカースト制度でいうならば最下層にいたと思うんだけど、一番上にいた子たちも普通に接してくれていたので(理由は未だにわからない)、カースト制度に対して強く負の意味で意識するようなことはなかったように思う。 だけど、女子校だったこともあってか周りの子たちはカースト制度にとても敏感だった。

それこそ、カースト制度の下にいると想定されるマクラとモウフが作中で話していることと同じようなことを私は学生の頃何回も聞いてきた。「ああ、そういうことあの子が言ってたな」なんて15年以上ぶりにその子のことを思い出したりするほどにそっくりそのまま。

そして、社会人になってカースト制度から脱せられるかと思ったら、今度はまた違う意味でのカースト制度に悩まされたりするんだよね。 学校だろうが社会だろうがどこにでもカースト制度はあって、それがなぜ生まれてくるのか、それはマクラとモウフがしっかりと語ってくれている。私はそれに対して、とてもしっくりきた。

何度も「しっくりきた」と書いているけど、本当に「この人がそれを言うんだ」がしっくりくるように書かれているんだよね。その「しっくりきた」がたくさん並んでいく中で、最後の最後はある人がこの事件の幕を閉じるんだけど、その時のある人の発言が本当に素晴らしかった。 そこだけは「しっくりきた」ではなく「そうなの!?」でした。ラストは必見。伊坂幸太郎節炸裂でした。

なんていうか、読み終わってそのまま衝動的に書いたから流れもへったくれもない文章になっちゃったんだけど、とりあえず「読んでみて!」と大きな声で叫びたいくらいに素晴らしい作品でした。 きっと、この人生に対してのやりきれなさを感じてる人には刺さる作品じゃないかと思う。 私も当時そこまで悩んでなかったけど、20年前にこの作品に出会いたかったなって考えるくらいに何か新しい気づきをくれる作品です。読めてよかった。