あまりにも素晴らしすぎて、終盤は涙が止まらなくなった。なんて尊い物語なのだろう。登場人物の誰もがとても愛らしい。私は、この漫画を「何かに打ち込み、もがきながら生きる人たちに寄り添う物語」だと表現したい。

このひゃくえむ。の題材は陸上競技の100m走で、主人公のトガシは日本を代表するトップスプリンターなんだよね。そのトガシがラストにとてもいい走りを見せるまでの物語。なんだけど、そこに至るまで人間臭くもがいているトガシをひたすら描き続けている。だから読んでてほとんど苦しい。楽しいところなんて、幼少期とラストの100m走のところだけかもしれない(笑)

子どもの頃はただ走ることが大好きだったトガシが、思春期になっていろいろ考えだしてしまったり、他人の期待や記録に振り回されて、いつのまにか走る意味とか考え始めちゃうんだよね。そういう人間の性みたいなのが本当に憎いというか、人間であることをもどかしく感じる。ただ、シンプルに速く走る!だけでいいのにね。

ちなみに、小学校時代のトガシが小宮に言うセリフが私は大好きなんだ。それが「この世には単純(シンプル)なルールがある。それによると、たいていの問題(こと)は100mだけ誰よりも速ければ、全部解決する」。これこそ、シンプルに速く走る!の究極の表現だと思う。

そして、トガシがずっと苦しんだ中で、最初の頃の気持ちを取り戻すところにたどり着いた、その紆余曲折が本当に素晴らしい。だからこそ、ラストは涙が止まらなくなるほど心を動かされる。

きっと、いろんな人が何かに打ち込んでいて、もがき苦しんでるんだと思う。人生報われないとか生きるのしんどいなって思ってる人、たくさんいると思う。そういう時こそ、全部頭の中のこと置いて、シンプルにしてみたら?って言ってるような気がするんだ。私はそう受け取った。

私は別に何かに打ち込んでいるわけではなくて、ただ毎日仕事に励んでいるけど、それでもいろんなこと考えて頭でっかちになって訳わかんなくなって、しんどくなったりする。今もしんどい。だからこそ、トガシが最後にすべてを投げ打ってでも走った描写は本当に輝いていたし、この物語が美しいと思えるんだ。とてもうらやましい。

そして、うらやましいと同時に、格好いいと思うし、私もそんな風になりたいなって思う。だから、ひゃくえむ。は私にとって少しお守りみたいな作品。

頭でっかちになってしんどくなったらこの作品を読み返すんだ。大事なことは何か、思い出させてもらう。

だから、この作品に出会えて本当によかったって思ってる。大好き。